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美しいのさ「さよならガールフレンド・高野雀・感想」

漫画

 

さよならガールフレンドを読みました!

さよならガールフレンド (フィールコミックス FCswing)

さよならガールフレンド (フィールコミックス FCswing)

 

とても素晴らしい短編集。オススメです。個別に感想を書いていきたいと思います。

 

さよならガールフレンド

高野雀さんは言葉選びのセンスが凄く良いと思った。

「あいも変わらずセミと緑がうるさい」という最初の一言で、うだつのあがらない田舎感を表現する。これだけで「ああ、もう絶対いい作品だ」と確信を得てしまった。

他にも、主人公に向けて言うお母さんのセリフが「イオンは今の時間 安住のおばちゃんがレジ入ってるからコンビニにしときなさい」って言うのだけれど、これが凄くリアリティのある表現だなあと。

そう「イオン」なんだよ、田舎で買い物といえばイオンなんだよ! 選択肢としてそれしか存在してないんだよ。そして主婦は大概そこで働いているんだ。この一言に凝縮されているもどかしいまでの閉塞感。

作中に登場するビッチと呼ばれている先輩が「お勉強たのしい?」と尋ねるのに対して、滝本が「解ければ愉しいっす」と答える漢字表現の細やかさ。

もう素晴らしいなあと。最高だなあと思いました。

 

「ワクワクするけど、なんもない感じがかっけーな」という言葉を工場に向かって言い放つ先輩だけれど、これは古い町に住んでいる人たちが抱く東京へのイメージを的確に言い当てていると思う。もしくは「憧れているが一生関わらないもの」の象徴だろうか。そういったものに現実味のない憧れを抱く感情を僕自身も思い出してしまった。

狭い世界で生き続けていると、人はついついうっかりと世界を縮小させてしまう。

それはおそらく不幸なことなのだろうけれど、不幸であろうとなんだろうとそれでもそこで生きていくしかない。

じゃあそんな息も詰まるような狭い世界の中で、なにが救いになるのかっていうと、友人だったり、恋人だったり、好きなものだったりする。僕らはそういう自分が信じられる味方を見つけて、なんとか日々をやり過ごすしかない。

そういうものがない生活は空虚でひどく漫然としているけれど、そんな味方を見つけられたときは誇張でもなんでもなく世界が救われたような心地がする。

そんな味方と離れ離れになってしまう悲しさを、例えば僕は愛と呼んでみたいと思った。

 

「恥ずかしいくらい独りぼっちの世界で 君だけは味方だった」

僕はこの作品で、そういう感情を思い出した。

 

面影サンセット

年相応という言葉が年々と怖くなる。その言葉に含まれる様々な意味を推測して、自身を省みて、息苦しくなるというのを繰り返している気がする。

名残というやつはどこまで残ってくれるのだろうと、加齢するにつれて思っていた。何歳くらいまで「大学生ですか?」と訊ねられるのだろうと考えることもある。

いま自分は年相応でいられているのだろうか。年相応であり続けることの是非はともかくとして、加齢と共に積み重ねていかなければいけないことはいくつかある。

この作品はそういう危機感を再び思い出す作品だ。

誰しも「ヒロくん的行動、もしくは発言」をしたことがあるのではないかと思う。僕も例に漏れず。

 

いまの僕達はこれからの僕達の中で一番若い……というこの漫画でいうところの「最初の光」は、縋る希望とするには少しばかり頼りないけれど、思い出すとまあ少しだけ顔を上げてみるかという気分になる。ささやかな支えになる。

そういう漫画。

「上手く言えなかったけれど、そのうち元気だせよ」というセリフの「そのうち」という言葉が安堂の軽やかな優しさが滲みでていてとても良い。

 

わたしのニュータウン

世界とは自分と自分を取り巻くなにかしらだ。

世界は滅びないけれど、望む望まないに関わらず変わっていってしまう。

僕にも本当にわずかだけれど友達がいる(と思っている)が、みんないくらか状況が変わってきている。毎日のように一緒にいた友人も、今では年に数回会うくらいになってしまった。

それでもその人達と会うと、僕は少しだけ「あの時の自分」を取り戻すことができて嬉しくなる。その人の前でしか顔を出さない自分を感じることを本当に喜ばしく思う。

僕がいちばん恐ろしいと思うものは、自分の身体の異常と親しい人の訃報だ。なんとなくそう考えていたが、つまるところこれこそが自分の世界ということなのだろうと思った。

世界が滅びないことはやっぱり幸福である。

どうかいつまでも世界が穏やかでありますようにと、この作品を読んで思った。

 

地味だと編集さんに評されていたみたいだが、僕はこの作品がいちばん好きだ。

変わることと変わらないことの尊さを感じる良い作品だった。雪中に工事現場を眺めるシーンは妙にじんときてしまった。

 

ギャラクシー邂逅

この漫画に関しては感じ入るところがあまりなかったのですが、女性に「あんまり通勤途中とかに話しかけられたくないんです」なんて言われても平然とした様相を保ちながら仕事ができている山科くんに最大級の敬意を払いたい。素晴らしい。

君のその頑強なメンタリティは一朝一夕で身につくようなものではないだろう。その些細な振る舞いで君の歩んできた人生の勇ましさを想起してひれ伏しそうになったよ。

それでいながらとても器用な喋りができるわけでもなく、言わなくていいことまで付け足してしまう君の至らなさが愛おしい。そこだけは自分のようである。お前はいつも喋りすぎなんだ。少し黙ればよいのだ。でもお前は黙れないし、言われたことを真に受けて喋り続けてしまうんだ、そうまるで自分のように!!

 

ああ……山科くん。君の未来に大いに幸あれ。

山科くんの幸せが僕の幸せだ。

 

まぼろしチアノーゼ

親の言葉は呪いである。

幼少期から最も身近にいる人間が繰り返す言葉に人生を左右されるなんてのはよくある話で、この作品の主人公である岩崎さんも、そして僕自身も例に漏れず親に呪われて生きてきている。

親でなくとも、誰しもがなんらかの呪いをかけられて幼少期を過ごす。それを世間では愛情という言葉で表現することもあるらしい。

確かにある側面からみればそれは愛情なのだろうけれど、その愛情が災いしてねじれた感性をもつこともありうる。

岩崎さんは親が事ある毎に繰り返してきた「かわいげがない」という類の呪いで、すっかりとねじれてしまった人である。

不幸なことに呪いを跳ね除けてしまった人が身近にいるというオマケまでついてしまった人だ。

「男の人に求められることが全てではない」なんて言葉は、彼女には作用しない。長い時間を培ってかけられた呪いは、実感することでしか解くことはできないのだ。

 

さて、ここで男性である僕が彼女のために、「君の感情はよく理解できる」よということを示すためにたくさんの言葉を並べることは簡単だ。しかし彼女の一挙手一投足を読み解き、彼女のことをどれだけ理解できているかを書き連ねたところでさほどの意味をもたないと思う。

「女の子」にまつわる苦しさを描いたこの作品を読んだあとに、「女性の気持ちもわかるよ」なんて戯れ言を僕は吐く気は一切ない。

だからこそ、僕から言えることはただひとつである。

 

僕はマウンテンパーカーと眼鏡が似合う女の子が大好きだ!!!

 

君は充分に女の子だよ、と早く誰か彼女に伝えてくれ!

 

エイリアン / サマー

この童貞が!!! という作品。

しかし童貞よ、お前が腐れ高校生に対して拳を振るったことは、お前の人生の中で大いに価値をもつだろう。その記憶が今後のお前を支えることは間違いない。

お前の振るったその勇気が僕には眩しい。人には暴力を用いなければいけない瞬間があって、僕はその瞬間を幾度も逃してきた。だからこそ作品内の暴力は、とても尊いもののように僕は感じられた。

あと「バカなの、死ぬの」は中学生俗っぽさが表現されていてむしろ良いなーと思いました。まあ確かに他で代用できればそれにこしたことはないけれど、ネットスラングをついつい使っちゃうのって中学生っぽくて好き。キャラにも合ってるしね。

 

それにしてもヤン女武田さんが可愛い。性に奔放なふりして実はウブとかそういう感じだよこのパターンは。こんな子が前触れなく自分の前に現れてくれればいいのに、って未だに思うよ。たぶん死ぬまで思う。それが悲しき男の性なのだ。

素敵な女の子が、ある大切なことを気づかせてくれるというのは王道ながらやはり良いものです。

 

総括

当人の技量とは関係なしに、感想を引き出す作品は偉大だ。作品がそこに存在するだけで偉大ではあるのだけれど、それ以上にそこから更に二次的になにかを生み出そうと思わせてくれる作品は偉大だ。

つまりまあ、さよならガールフレンドは僕にとってとても素晴らしい作品であったというわけです。特にいい感じの言葉が思いつかなかったので、こんな感じで終わります。

 

ちなみにタイトルはBase Ball BearのC2に収録されている曲から。

 

「あたらしいひふ」の感想も書こうかなと思ったけれど、とても長くなりそうな予感がしたのでここで割愛。外見と内面の乖離とか合致のしなさとか……まあそういうことを描いたとても面白い作品、未読の方は是非。

さよならガールフレンド 高野雀 特設サイト

 

 

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