読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

読者には誤読の権利がある

だから勘違いした感想書いてても許してほしい

人は誰しも全てを投げ売ってあてどない旅をしたくなる「イントゥ・ザ・ワイルド・感想」

映画

 

イントゥ・ザ・ワイルドを観ました!!

イントゥ・ザ・ワイルド [DVD]

イントゥ・ザ・ワイルド [DVD]

 

 

あらすじ

裕福な家庭に生まれ、物質的に恵まれた環境で育ったクリス・マッキャンドレスは大学を優秀な成績で卒業する。両親はハーバードのロースクールに進学 することを望んだが、金で物ばかりを与える親に嫌気が差したクリスは学資預金を寄付し、身分証を切捨て、この世界の真理を求めアラスカへと旅に出る。旅路 の中で様々な人と触れ合い、本当の幸せとは何かを知る(wikipediaより引用)

 

感想

タイトル通りの気持ちになりますね。人は誰しも全てをなげうってあてどない旅をしたくなるときがある。そんな気持ちを蘇らせる物語でした。

そう「蘇らせる」という感覚。誰しも……特に男性なんかは常にそんな生活をしてみたいと思ってしまうものではないだろうか。心の何処かにある原風景に戻り、そこでいつのまにか自分に強く根付いてしまった価値観と切り離された生活をしてみたい。自身に潜む野生感と対峙してみたい。

そんな願いを誰しも多かれ少なかれ持っているものではないだろうか。

安寧とした生にすがりつくよりも、いっそ死の淵を覗いてみるような生活をしてみたいと思ったことがある人はいないだろうか。

そんな気持ちを抱いている人にはこの映画は強く響きますね。そしてまた僕はそういった類の人間であるため……感動してしまいますよね、こんなものを観せられてしまっては。

描かれているのは我々の普段の生活からは遠く離れた物語でありながら、誰にでも作用する普遍性をもっている物語だと思います。

 

しかしだからといって、この映画は「みんなも価値観に縛られず旅に出ようぜ!」と推奨しているわけではない。反対する人は、反対意見として納得のできるものを投げかけてくる。そしてこういった生活をすることでつきまとう危険性も描いている。

ただただ無防備に旅を推奨する物語ではないが、その旅に思いを馳せてしまう気持ちもしっかり描けている。主人公のアレックスが非常に理知的な人間というのも良いのだろう。「そんなことはわかっているが、それでも……」という心情が描けている点も高評価。

バランス感が非常に上手い作品だと思う。

 

そしてなによりも素晴らしいのが、普遍的な価値観を捨て、俗世とは隔絶された生活を続けることで得られたものが非常に普遍的な価値観という点だ。

幸福とは他者と共有することで得られるということに関して。

これだけを突然言われても「当たり前じゃん」と思うのだけれど、それを体験しているにも関わらず知識として得られることがなかったことがまた感動を誘うんですよね。

ロンとの頂上での語らいがそれですよね。感動を共有できたからこそ、幸福を感じることができる……ということを経験してもなお自身が抱いた「理想の生活」への憧憬を捨てきれない若さ。

「本当の幸福ってつまりこういうことだよ」といろんな人に言われても、それを是と認められない幼さ。

若さには論法は通じず、体験させることでしか理解に及ばすことができない……という点をここまで見事に描いた作品はなかなかないなあ……と思いました。

 

アレックスを愚かだと吐き捨てることは簡単だ。

しかし自分の心の声と向き合い、対話し、考えて、感じて、そしてひとつの結論に辿り着く彼の人生に共感を覚えずになにに共感を覚えればいいんだ! と思ってしまう。

誰もが抱える思想を人生を賭して突き詰めていった男の物語、いきついた結論と状況にグッとこないわけがない!

名作です。

 

物語以外にも映像的な美しさが凄まじい作品だった。それだけでもこの映画に価値はある。

撮影大変だっただろうな、と無用な心配をしてしまうほどに尊厳とした大地の美しさが収められている。

なによりもロンと共に頂上に登ったシーンで、頂上から見下ろす景色を「見せない」という手法が素晴らしいですね。ここで重要なのは「景色を観る」ということではなく、「景色を共に観ている」というふたりの状況を重要なわけですよ。なにを語るべきかなにを語らないでおくべきかの取捨選択がめちゃくちゃ上手いですね。

頂上のときも写す映像は空から降り注ぐ太陽なんですよね。そこがまた終盤に繋がるから「上手いなあ」と思わずにはいられない。

 

名セリフ

それにしても良いセリフが多い作品ですね。

 「人生において大切なのは強さよりも強いと感じる心」

「もし生き方で理性が支配されるなら、人生の可能性は打ち砕かれる」

「全ての男の夢はメキシコ人の恋人を持つこと」

「彼女バカだけど、そこが好きなんだ」

 

一言一句同じじゃないと思うんですけど、前後の流れを省いても作用する言葉だなと思ったので書いてみました。

前後の流れを要する名セリフって名セリフじゃないよな、と思うのですが、なかなか伝わらないので歯がゆいです。

 

この映画には原作があるようで、これもまた読んでみたいです。

荒野へ (集英社文庫)

荒野へ (集英社文庫)

 

最近、冷たい熱帯魚をはじめとしたノンフィクション系列にある作品を観ることが増えました。そういう時期みたいです。

 

イントゥ・ザ・ワイルドを観ている間……特に序盤を観ているときに「ライ麦畑でつかまえて」と同じ匂いがする作品だなと思いました。

キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション)

キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション)

 

まあホールデンはあそこまで勇ましくはないし、そもそも別に似てねえよと言われてしまえば閉口するほかないのだけれど……同じ匂いを感じましたね。

「人間が誰しも抱いている感情」という点においては描かれているものは非常に似通っていると思いました。

 

広告を非表示にする