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余談が本談「掟上今日子の備忘録・西尾維新・感想」

小説

 

掟上今日子の備忘録を読みました。

掟上今日子の備忘録

掟上今日子の備忘録

 

 眠ってしまうと1日のことを全て忘れてしまう掟上今日子さん。彼女の「最速の探偵」としての物語を描いた作品です。

 

 

西尾維新の手腕

一日で忘れるっていってもどういうタイミングで? そもそも一日の概念ってどうなってるの? そもそも記憶を忘れ続けたら赤子程度の知能じゃないの? という読んでいる方だれもが抱く疑問に対して、非常にスマートに解答を描く西尾先生の手腕が光る作品でした。

あらゆる面で上手いんですよね。

3D映像に関係する事件起こして、「赤と青の変な眼鏡」というプチ面白いワードを引き出しつつも、今日子が最新機器に疎いが、ある程度の期間の記憶は保持している情報を出すことで、記憶は後天的なものだと示唆する……みたいな流れとか。

もうこれはキャリアが成す技なんだろうなあ……と感心します。抜かりねー。

 

「眠ることで記憶がなくなる」というのは掟上の「個性」であり「弱点」でもある……という設定が物語に組み込まれて、それがちゃんとドラマチックに機能している。

ちゃんと読者が「うわっ掟上さん寝ちゃった!?やべえ!」と第一章から驚けるように描いてくれている。

設定が設定のまま放置されるのではなく、物語を動かすキーとしての役割を果たし、全体にメリハリを与えている

 

こういう第一章のスマートさは本当に凄い。読者が想定しうる疑問に対してバリバリ応えつつ、物語をつつがなく進行していく。これだけの情報量をテンポが悪くならないように配慮しながら配置していく西尾先生すげえ。

「はいはい、これだけの情報を提示したら君たちはこういう疑問を抱くよね? もちろんちゃんと解答を用意してありますよー」という……手のひらで踊らされてるなあと思いました。

物語としては当たり前のことなのかもしれないですけれど、やっぱ西尾先生って凄いんだなーと再確認しました。

なんでめだかボックスは曖昧模糊にしてしまったのかなーと悩むばかりです。

 

 

全体の感想

で、実際の内容としてはどうだったのか……というとこれまた普通に面白い。一番ではないけれど、ここ最近の西尾作品の中ではかなり好きな部類です。

 「残すこと」にフォーカスをあてたミステリーが個人的にとても好みだった。

 

しかし寝れば全てを忘れるからといって、みんなすんなり受け入れすぎでしょう。正直それを疑うパートなんてダルいので読みたくはないですけれど、みんながみんな素直すぎて些か戸惑いを覚えたよ……。

あと記憶喪失するからといって、別に機密保持に特化するわけではないだろと思ったけど、やっぱりそこもツッコむとめんどくさいのでスルスルスルーされてましたね。

 

 

ミステリー的な面白さ

ミステリーとしても結構楽しめました。解答に関しては「知るか!」と思うようなものがほとんどだったのですが、それでも解答に驚きのあるものだったので怒りも緩和される……という感じですね。

個人的にはミステリーは一瞬でも納得したり驚いたりできればOK派なので、むしろこういう変化球は好みです。

 

著作リストは爆笑しちゃいました。作中で「こんなリストを一晩で作るなんてタダモノじゃないな」と厄介くんが言っていましたが、一週間で100個以上の能力考える西尾先生に比べると全然凄く感じないあたりが面白かった。自分で自分の首を締めるとはまさにこのことだなと思いました。

 

 

探偵と助手の関係「厄介の役割とは」

厄介くんが助手になる為の物語だったわけですが、素直に助手になるわけではなかったのも個人的によかったな。

ややもすれば探偵における助手など、驚くだけが仕事になってしまうことが多い。

今回も例にもれず厄介くんはただの依頼主。事件を呼び寄せるだけのただの厄介者になりかねないところだったのですが……後半になってその図式が壊されたのが実によかった。

探偵と助手という図式ではなく、探偵VS助手という図式。

探偵を助けるのではなく、探偵の操作の邪魔をする、そしてそれが最終的に助けになる……という関係性はなんだかとっても好みな感じですね。

 

厄介くんが(文字通りの意味としても含み)語り部になっているわけですけれど、個人的には彼の起こした厄介事が掟上さんの記憶喪失に繋がっているんじゃないか……というか繋がっててくれ~と思うばかりです。

 

 

余談

掟上さんがベッドのうえで服を着させられているシーンでふと思ったのですが、彼女は自身のことを思い出すために腕や足、はたまたお腹にもメモを入れるわけですよね。

で、記憶を失ってから目覚めたあとに「服で隠されている足やお腹をみる」って動作をするってやや不自然めいてませんか? ギリギリ腕は理解できても太ももとかってお風呂入ったり、着替えたりしない限りは見ないじゃないですか。

でもメモをみるという「現状把握」をしない限りは自分がなにものかも理解できないから着替えなんてしてる場合じゃないですよね。

掟上さんにとってはメモをみることこそが最優先事項になるわけですよね。

 

つまりですよ?

僕が掟上さんならば「メモを見逃す確率」をできるだけ下げたいと考えます。逆に言えば「どんな状態からでも身体のメモを見られる状況で眠ることが大事だ」と考えるわけです。

なにがいいたいかというと……

 

掟上さんは寝るときは全裸! 間違いない!!

 

 

……寝るとき用のブラに関しての描写があった? んなもん知るか。

というか厄介くんはよくそんなものを一目で理解できたな。レベルの高い変態だ。

 

 

 

 作家にとっての箸休め

作中で「作家には箸休めならぬ、筆休め的な作品がある」という言葉がありました。この言葉は事件の根幹にも繋がる実に素晴らしいセリフでした。

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きみとぼくの壊れた世界 (講談社ノベルス)

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そろそろ箸をとってもらいたいものですね。

 

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