読者には誤読の権利がある

だから勘違いした感想書いてても許してほしい

戦士だって人間だもの「十二大戦・西尾維新・感想」

 

西尾維新先生の十二大戦を読みました。

十二大戦

十二大戦

 

 

読み辛えええええ……

内容に関しての感想の前にこれだけ文句を言わせてください。

読み辛ええええええ!!!

改行してくれ! 頼む!! 改行してくれええ!! と叫びそうになりました。

理解がし難い文章でないのに、物理的に読み辛い文章というのが一番辛いです。

ここまで改行していないとさすがにリズムが把握しづらい。緩急がないので、要所要所でダラダラとしているなあという印象をうけてしまいました。内容的には非常に鋭い場面でも、「ふーん」としか思えないことが多かった。

その状況に至るまでに、心情を整えられていないというか……。

逆に言えば整えさせないために、改行をしなかったのだと考えるのが妥当か。

なんでこんな書き方をしたのだろうか……?

 

 

改行をしなかったのは、読者に「息もつかせぬほどにスピード感をもって読んで欲しい」というメッセージなのかもしれない。

戦闘を扱う以上は「スピード感」というのは非常に大事なものである。

しかし文章でそれを表現するのはなかなか難しい。戦闘が入り組むほどに描写すべきことが増えるし、描写を減らせば面白さと状況が伝わらない。

そういった点が相反している小説内でのバトル描写にひとつの答えを出したのが、この「改行なし」という結論……というのはどうだろう?

圧倒的な情報量をもった文章を連続で叩みかける。つまり「物理的に読者に息もつかせない」ことでスピード感を出そうとしたというわけだ。

改行がないことで、一息つかせず最後まで読みきらせることで描写を濃くさせながらスピードも出す。

これならば改行がない理由もわかるし、名乗りや章内章が多くあることにも納得できます。

あれは「読者の息継ぎポイント」だと考えるべきだ! と思いました。

 

 

……という感じで無理矢理こじつけてみましたが、結論としては、どんな効果が出ていたとしても擁護できないなあ。ちょっとこの情報量を含んだ西尾文が来るとちょっとキツイと思ってしまうんですよね。やっぱり細々と息継ぎしたくなる。

恐らく実質的な文章の情報量としては大したことないのだろうけれど、文の塊が目の前にあるだけで「うわぁ」と思ってしまうな。

 

あと、この小説の根底にある「強者でも条件が整えばあっさり死ぬ」というのを表現するべく、「読者への不意打ちのしやすさ」として読みやすさを排除したのかなーとかも考えました。

けどやっぱり読みづらいことには変わりないなあ……。

我ながらなに言ってんだ感が強い文章だな……。

 

 

内容

読みづらかったんですけど、内容は面白かったです。

西尾シリーズの中では? と問われると、嫌いじゃないが好きでもない位置でしょうか。普通よりちょい上くらい。

人に最初には薦めないけど、面白いかどうか問われれば頷く……みたいな感じでしょうか。我ながら褒めてるのか褒めてないのかよくわからない評価だ……。

いちばん好きな西尾作品は世界シリーズです。

 

 

そもそもこういったバトルロワイヤルもので「強者がちゃんと強者として振る舞い、そして強者もちゃんと状況が整えば死ぬ」というのが好きな僕としては、まあ面白く思わないわけないよなーという感じ。

西尾維新の中二力全開の世界観でバトルロワイヤル。

そう言われただけで、ある程度の求心力はあります。

 ハンターハンターの蟻編の後半が好きな人は、間違いなく好きなのではないかと。

 

 

と書きつつも、誤解を恐れず言うならば、内容よりも紹介文が一番面白かった。

と、いうよりも紹介文の補完こそが本文なのでは? と思うくらいだった。

この本は12章で構成されており、章の始まりに主要人物である12人の十二支代表からひとりずつ紹介がされるのだけれど、その文がいちばん良かった。

 

例えば、戌の紹介文は。

 

本名・津久井道雄。五月五日生まれ。身長177センチ、体重52キロ。武器は持たない主義で、牙で噛みつく戦闘スタイル。なんでも噛み砕くその牙は「狂犬鋲」と呼ばれ、恐れられている。

普段は保育園に勤めている彼の働きぶりは保護者からの評判も上場で、子どもたちからの支持も高いが、その実、「資質」のある子供を適切な組織に流すのが彼の本業である。一度間違えて、ただのペドフェリアに幼女を流してしまったことがあったけれど、その際は命がけで奪還した。

現在、その幼女は彼の養女となり、彼女の養育費を稼ぐためにも、戦場と保育園、双方の労働に精を出している。

私生活では書道にはまっていて、最初は周囲の理解をまったく得られなかったけれど、それでもくじけずに書き続けることで完成した彼の雄渾な筆致は、語らずして反対派を黙らせた

 

この紹介文なんですけれど、ほぼ全てのキャラクターがこんな感じなんです。

もう読んだだけで「西尾先生キレッキレだなー!」と嬉しくなりましたよ。

特に素晴らしいのが太字にした部分で、こういうの読むと「ああ、こいつらも生活がある人間なんだなあ」と思えるんですよ。

 

キャラクターのバックグラウンドが見えることで、突如として現れたキャラでも感情移入がしやすいんですよね。この紹介文が出た後と前ではキャラに対する印象が随分と違う。

バトルロワイヤルに参加する殺し屋なんて、きっとろくでもない奴らばかりだろうという思い込みを覆してくれているんですよね。普通に考えれば悪人が常に悪事をはたらいているわけがないので当たり前なのですが、悪事以外の日常を描いてくれているだけでキャラへの感情移入の仕方が全然違いますね。

「十二支を代表する殺し屋たちのバトロワなんて自分たちの生活とはかけ離れたものすぎて、彼らの行動理念に共感を得られないのが普通なのですが、この妙に人間味溢れる紹介文のおかげで、すんなりと彼らに好感を抱いてしまう。

「普通にこいつら人間なんだなー」と思えるだけで、キャラへの印象がまるで違うんですよね。しかも後半にはそれを狙ってやってることが明らかになるから二重で感心してしまった。

「戦士だからといって、超大層な願いを抱いているわけじゃない」という結論に説得力をもたせる形になっているのも素晴らしいなー。

 

250ページしかないのに、12人の日常なんて描けるわけないよねー。じゃあ紹介文を挿入することでなんとかするかー。という手法は実にありがちだとは思うのですが、その紹介文が非常に魅力的というのは西尾先生の底力をみた気がします。

これもう西尾先生ならひとりのキャラだけで長編書けちゃうじゃないのー? と思うくらいの良い紹介文ですよ。想像力を掻き立てられる。

 

戌の紹介文からはあまり感じられないけれど、他のキャラだと「どう凄いのか知らんが、なんだか凄い」って感じの紹介もあり、ケレン味要素が大好きな方にもオススメしたい。チープになりすぎず凄さを表現するのって微妙に大変なことなんだけど、こういうところでも西尾先生の力量を感じられますね。

こんなにもわかりやすいケレン味はなかなかないのではないだろうか。

そういう意味合いでもオススメの作品です。

 

 

この作品の後日談

十二大戦は大斬に収録されている作品の前日譚であるみたいです。これに収録されているのは3作品くらいしか知らず、読んだものは総じて微妙だった覚えがあるのですが……十二大戦の続きが読めるなら買いたいなーと思いました。

 

 

こちらもオススメ 

戦闘破壊学園ダンゲロス (講談社BOX)

戦闘破壊学園ダンゲロス (講談社BOX)

 

上述した「強者でも状況を整えられればあっさり死ぬ」「能力者が十全に能力を発揮できていない状況でも死ぬ」というのと同じ魅力をもつ作品。

そういった面でいえば一番好きな作品ですね。僕個人が架神さんを好きすぎるだけかもしれないけれど。

十二大戦が好きならまず間違いなく好きな作品だと思います。是非。

 

一応現時点での最新作も貼っておきます。

ダンゲロス1969

ダンゲロス1969

 

 こっちは本当に心の底から人を選ぶ作品だぜ!!! 超下品だけど面白いですよ。

 超、下品ですけれど。

 

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