読者には誤読の権利がある

だから勘違いした感想書いてても許してほしい

はじめてのキノの旅

 

人生に影響を与えた1冊、というと非常に悩んでしまう。

1冊に絞れというのはなかなか酷なことで、影響を受けた本というのは数知れない。1冊、といっても雑誌に漫画に小説……様々な形態がある。

あらゆるタイミング毎にあらゆる1冊が人生を変えてきた。あらゆる本に影響を受け、救われ、鼓舞され、泣かされてきた。

1冊を選ぶというのはなかなか難しい。

そんなめんどくさい葛藤を経て、今回選んだ人生に影響を与えた1冊は「僕にとっての初めてのライトノベルであるキノの旅

キノの旅―The beautiful world (電撃文庫 (0461))

キノの旅―The beautiful world (電撃文庫 (0461))

 

 現代風に表紙がアレンジされた新装版もあったのだけれど、やはりこちらの表紙のほうが馴染み深い。もう15年も前の作品になるのか。

 

 

僕がこの作品に出会ったのは中学生のとき。

隣の席に座っていた子が読んでいたのを貸してもらったのがきっかけだった。詳しい経緯は忘れてしまったけれど、表紙が漫画チックだったので興味がでたのだと思う。

 

読んでひとこと、衝撃だった。

勇者がドラゴンを倒す話でもなく、探偵が事件を解決する話でもなく、笑いが巻き起こるドタバタ活劇でもなく、旅人がモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)と旅をするだけの小説。

当時の僕の脳内ライブラリーにない物語を描くキノの旅は本当に衝撃だった。

こんな物語があっていいのか……と。

わかりやすいカタルシスのない地味な物語。爽快感がないどころか後味の悪さすら感じてしまうような物語もある。

それなのにぐいぐいと惹き込まれ読み進めてしまう。

人が生きるということは様々な事情が折り重なっているということ。自分が生きている世界というのは実に恵まれているのだということ。いろいろな価値観をもった人間がいて、それら全てを理解することは到底不可能だということ。

普段はなかなか考えないことを、目の前につきつけられる物語だった。

 

 

思い返すに、当時の僕にとって新鮮だったのはキノの性格だった。

生粋の週刊少年ジャンプっ子であった僕は「主人公という存在は、積極的に悪を挫くもの。悪を挫かねばいけない立場に自然と立つもの」という認識があった。

しかしながら、キノは自分に危害が加わらない限りは傍観者でありつづけ、時としては悪のほうに立つこともある。

最終的に自身にとって有益であり、納得ができる結論に達するために彼女はクレバーに立ち回り続ける。

彼女の「正しいと思うことは自分の価値観で決める」という思想と、「自分に不利益が合った場合は自分でなんとかする」という行動力が、当時の僕には非常に魅力的だった。

 

正義と悪と前述したけれど、そもそもキノの旅の物語では明確に正義と悪が定義されないものもある。

見方によってそれは正義となり、悪となる。そもそも正義と悪なんて単純なものでは推し量れない事情が物語の中に存在した。

「物語とは勧善懲悪で構成されている」という思想を見事に破壊してくれた作品だった。ワンピースやドラゴンボールとはまた違う類の面白さがそこにはあった。物語の原体験を覆されたような気分になった。

「なにこのもやっとする感じ」という読後感も初めての体験だった。

 

 

僕が本当の意味で物語に没頭するのはおそらく「キノの旅」がきっかけだったように思う。

これがきっかけでライトノベルを知り、読書というものに深くのめり込んでいったことを考えると、やはりこれは人生に影響を与えた1冊と言えるだろうと思う。

最初はもっと啓蒙書とか大人になってから影響を与えた本を挙げようかと思ったのだけれど、懐かしさも手伝ってキノの旅について書いてしまった。

周りにキノの旅を読んでいる人があまりいないので、できればいつかキノの旅を片手に語り合う宴なんてしてみたいものです。

 

 

そして黒星紅白先生の画集を眺めていると時の流れを感じずにはいられませんね!!

黒星紅白画集 rouge
 
黒星紅白画集 noir
 

時雨沢×黒星作品を全て網羅している僕としては垂涎もののこの画集ですが、キノ1巻の表紙をみたあとだと違和感が凄まじい。もはや誰だ。

個人的には7~10巻あたりの絵が一番好きでした。

 

 

 

今週のお題「人生に影響を与えた1冊」

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