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気の利いた物語「居酒屋ぼったくり2巻・秋川滝美・感想」

 

居酒屋ぼったくりの2巻を読みました。

居酒屋ぼったくり〈2〉

居酒屋ぼったくり〈2〉

 

 

以前書いた1巻の感想はこちらから読めます。

 

前回、「居酒屋ぼったくり」を読んだ際に「押し付けがましすぎない薄味の人情」が魅力の作品と評しましたが、今回もそれは変わらず。さらっと読める良本でした。

今作も一気に読み切るよりも、ゆっくり時間をかけて読み込んでいったほうがいいと思います。

それこそ、自分が居酒屋におもむく頻度のように……他の本の箸休めに1章だけ読む。そんな読み方はいかがでしょうか。きっと合うと思います。

 

 

感想

今回は人物描写にグッと力を入れてきましたね。

2巻読書中に得た心地なのだけれど、居酒屋ぼったくりを読んでいるとRPGの気の利いた村人と話すときの感覚」 を思い出す。

僕はRPG内にある「物語を進めると微妙に変わる村人の会話」が大好きだ。

大抵の場合は同じ会話だけを繰り返す村人が、ある契機から話す内容が変わるとすごく嬉しかったのを覚えている。僕はそういった会話内容を変えてくれる村人のことを「気の利いた村人」と呼んでいる。

気の利いた村人の話が聞きたくて、冒険そっちのけで世界を飛び回ることもしばしばだ。そんな経験がある人も少なくないと思う。

ちゃんと生活に影響されて、話す内容が変わっている……という当たり前のことを目の当たりにするたびに僕は妙に感動してしまう。そのゲーム内でキャラクターが生きていることを実感させられるし、「そもそも同じ会話ばかりする人なんていない」という当たり前の感情に行き着かせてくれるからだ。

「今度はどんな話をしてくれるのかな?」という期待と共にボタンを押すときの感覚、僕が居酒屋ぼったくりに感じたのはそれに近いものだった。

 

 

居酒屋ぼったくりは美音以外は基本的にはイレギュラーに登場する存在だ。そんな彼らが時々現れては違った話をしてくれる。

その「違った話」というのが「ぼったくりに来れなかった期間の物語」にあたるわけだが、どうも僕は「違った世界に生きている人間同士が、同じ場所に集い、自分の世界の話をする」というものも好きみたいだ。

いわゆる異世界交流モノと言ってしまえばそれまでなのだが、居酒屋ぼったくりにはそういった面での面白さがあると思う。

それぞれ違った世界で生きている常連たちがひとつの場所に集い、それぞれが経験した物語を語る。それだけでなんとなく嬉しくなってしまう性質だ。それぞれの主義主張を聞いているだけで面白い。

そんな性質をもっているものだから、居酒屋ぼったくりが面白くないわけがない。

普段ならば交わることのない価値観が、偶然に居合わせた場所で交わる。そういったところに面白さを感じるので、現実的にも居酒屋という場所が好きだし、その空気感を表現しているこの作品も非常に好きだ。

気の利いた村人たちの話が聞けて、気の利いた村人たちがそれぞれ交流してひとつの物事について答えを着地させる。個人的には大好きな作風である。

 

いくつかオチが納得いかないものがあるものの、そうせざるを得ないよなというものばかりなので特に腹を立てるほどでもない。「結局、どう頑張っても喫茶店は流行りませんでしたー」なんてものより多少ご都合主義でも幸せな終わりがいい。

いやまあ……それでも些かご都合主義が過ぎる気もするが……。

 

 

肴の話

さて、気を取り直して今回のおつまみの話。

今回はガッツリとしたものが多かったような印象がありますね。サンドイッチとか餃子とか、どう考えてもビール案件な料理ばかりですね。

数としては日本酒が多かったのですが、どうも馴染みがないために流し読みしてしまう場面が多かったですね。それほど日本酒党というわけでもないですし……。

紹介されている日本酒はなかなか手に取る機会に恵まれませんが、だからこそ「いつかの楽しみの為に」そっと記憶に忍ばせておくことにしました。

個人的な読書の楽しみのひとつに「日常のふとしたことが、とある作品の内容とリンクする」ということがありますが……それを楽しみに待ちたいですね。

龍力ドラゴンなんかは、きっとお酒と対峙したときにこの物語を思い出すのかな、と楽しみになりました。 

 

3巻も楽しみですね。相変わらずいい表紙です。

居酒屋ぼったくり〈3〉

居酒屋ぼったくり〈3〉

 

しかしこれをずっと続けるのはちょっとキツイ気もするのだけれどどうだろうか……?

段々と話が「人情」に寄りすぎている気もしなくはないので、個人的にはよいバランスを保ってもらえればなと思います。これが続くと「説教臭いなあ」と思われる時期に差し掛かるのではないだろうか……。

ぼったくりの良さのひとつは「普通に生きている人でもギリ作ってみようと思える料理」が登場することだと思うので、そちらにも力を入れてもらえれば嬉しいなーと思いました。

 

小説には視覚的に美味しさを訴える手段がない。文字で想像させることで美味しさを表現するわけだけれど、その美味しさを想像するに行き着く為の描写がちょっと物足りなかったかなあ……と思いました。もっと長く書いていいんですよ! って思うけど、それは人によりけりか……。

 

 

こちらもオススメ

居酒屋ぼったくりが好きな方にはきっとしっくりくる物語なのではないだろうか。

異世界食堂 1 (ヒーロー文庫)

異世界食堂 1 (ヒーロー文庫)

 

 こちらもまた違った味わいのできる本だと思いますので、是非。

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