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NIKKI「引っ越し先が決まった」

 

「引っ越し先が決まった」

やっとのことだ。

やっとのことで引越し先が決まった。2月あたりから毎日のように物件サイトを眺める生活からついに解き放たれることになった。心のなしか身体は軽く、少しだけ気持ちも豊かになっている気がしなくもない。

物件契約を終え、5年住んだ街に電車で帰ってきたとき「もうここにも帰ってくることはあと数回か……」と名残惜しむ気持ちが……生まれなかった。

随分と前からこの街から逃げ出したいと強く思っていたので、せいせいとした気持ちだった。住み始めたころの自然が豊かでのんびりとした町並みが、5年経過するとキャッチと飲み屋に塗り替えられてしまうのだな。ゆっくりと侵食していたというよりも、ここ1年で突然変異したという感触がする。

新しい引越し先はとても静かな場所を選んだ。桜の木が見える、3階建の6畳間。

 

駅構内で配られるビラとティッシュを軽やかに避けながら、せめてもの祝杯にと発泡酒を買いにコンビニに向かおう……と思ったがこれからなにかと物入りだと思いヤメた。

頭の中にぼんやりと浮かび上がる貯金残高を眺めては、途方に暮れたりもする。

なにもしないで生きていけばお金は貯まるばかりだが、なにもしないまま生きていくのはあまりにもつまらなすぎる。

本当に必要なときに、お金をベットできる性格でありたいものだと思った。

 

家につくとちょっとした感慨が襲う。

この家に帰るのもあと30回もないのか……と。

汚泥のような文明に侵されていく街から僕をひたすらに守ってくれたのは他ならぬこの部屋だ。

大学生活の思い出の大半をここで反芻した。楽しかったことも悲しかったことも、ここで思い出してここで改めて実感した。部屋というよりは秘密基地だった。

この部屋に訪れたたくさんの人を思うと少しだけ笑みが零れた。頭の悪い記憶しかないけれども、それもまた一興かもしれない。

7畳の部屋でいろんなことをした。音楽と本にあふれた部屋だ。好きなもの以外は部屋におかないことを徹底した部屋だった。

正直、なにを成せたかも怪しい大学生活だったが、この23年間のなかでもっとも幸福な4年間だったと胸を張っていえる。こんな大学生活を送れる人は、正直あまりいないのではないかとすら思う。そしてきっとそれは各人みな同じように思っているのだろう。

自分の大学生活こそが至上であったと。

そう思うのであろう。

大学生活は尊い。

とても。

 

大学生活の思い出はとりあえず閉じ込めておくことにしよう。

そのための引っ越しである。

僕は現在社会人なのだから、いつまでも学生気分ではいられない。ちゃんと歳相応の暮らしをしなければいけない。

思い描いていた23歳とは随分と違うけれど、やはりそれもまた一興としか言い様がない。

家賃と顔をつきあわせていろいろ相談した。家賃の野郎は頑なに首を縦に振らなかったのでいろいろと大変だったが、かなりの減額に成功した。

もっと交渉の余地があったかもしれないが……いまの僕にはこれが精一杯だ。今度の引っ越しするときは家賃のやつを優しく抱きしめて「もうなにも考えなくてもいいんだよ」なんて言ってあげられればいいけれど、どうも僕の器量ではなかなか難しそうだ。

あいつ、わがままだし。

 

お金が欲しい。お金が欲しい。お金が欲しい。

呪詛のように呟きながら、引っ越しの為に部屋の片付けをずっとしていた。

お金があれば僕はいろんな人を笑顔にできるのにな、って思いながら新生活に思いを馳せる。お金が全てではないが、大半はお金だとは思う。貨幣経済の中で生きる以上はまあ当たり前のことだけれど。

暗澹たる想いを抱くのはまだまだ早いとは思いつつも、未来に光明が見え難い。

引っ越しして気分一新をはかりたいのだけれど、それもまた難しいことだ。度し難い現実はいつでも目の前に横たわっている。

けれども、いつまでもうじうじとしているわけにもいかなかった。どう足掻いたところで明日はくるし、今日を生き抜くためにお賃金を獲得しなければいけない。

日々は更新されていくし、自分も更新されていく。

良くなるか悪くなるかは正直わかったものではないけれど。

 

新しい今日を生き抜いていくしかない。

そう思いながらダンボールをまたひとつ束ねた。

 

新今日

新今日

 

 

気取った文章を散文調に書いてみました。けっこう書きやすいなぁ。なんか暗いけど。

Zはカッコイイから是非聴いてみてください。

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