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「昭和元禄・落語心中7巻・感想・雲田はるこ」

 

昭和元禄・落語心中7巻を読みました。

昭和元禄落語心中(7) (KCx)

昭和元禄落語心中(7) (KCx)

 

 僕はDVDがついてないコミック単体のものを買いました。この漫画に音がつき、落語が実際に聴ける……ということを考えると食指がぴくぴくと動くのを感じずにはいられませんでしたが……まあ決して安いものでもないので諦めました。

 

ちなみに前巻の感想はこちら。

感想

さて、前回の感想では「7~8巻で終わるかもしれない」と言いましたが、なんだかもっと続きそうな予感をひしひしと感じさせますね。アニメ化もするし、あと3巻くらいは続くのでしょうか? 10巻くらいで締めるのも悪くはないかと思うのですが。

6巻まで様々なものを「受け」ていた三代目助六(以下、与太)が、ついに「継ぐ」立場に如実に変わっていった7巻。与太を始めとした様々な人々がゆっくりとしかし確実に変わり始めているのをはっきりと描いています。

実に素晴らしい巻でした。相変わらず、雲田先生は「そのネタで一話描けるんじゃないの?」っていう話を少量のコマで描ききる天才ですね。与太の刺青の話とか、ちょっとじーんとくるものがあったのですが、さらりと終わらせる。

その手際のよさこそ、落語心中の良さだなあと。

 

小夏と与太の関係性がものすごく「夫婦」している点は非常に素晴らしく、彼らのここ数年の相変わらずの足取りと新たな足取りを感じずにはいられない……という話も十二分にしたいのですが、今回強く琴線に触れた点は八雲でした

八雲というよりは……樋口と八雲の会話でしょうか。

温故知新的な考えをもつ樋口との対立と、徹底的な懐古主義である八雲。彼らの対立が僕の非常にプライベートな状況と重なってしまい、妙に響きましたね。

僕自身、現在落語と関わる仕事をさせていただいているのですが、やはり八雲と同じような考え方を持つ方は多いです。落語家さん当人というよりは、落語を取り巻く人々にそういう方が多いような気がしています。

 

僕自身は樋口と同じような考え方をもっていて、古きものは当然素晴らしいものだ。しかしながら世の中に合わせていくには変わっていくことも大事だ……と思っているのですが、やはり八雲のような方とは相容れないことが多い。

どうしてわかってくれない? このままでは淘汰されていくばかりじゃないか? と思ってしまうのだが……聞く耳をもたないことが多い。

 

八雲の姿にその陰をみた……と言いたいところだが、八雲が違うところ、それは「聞く耳をもったうえで拒絶している」ということだ。

樋口の考え方はわかる。一度飲み込んだうえで「それでも落語はここで終わるべき」だという考え方に至っている。

八雲を頑なにしているものはなんなのか、当然ながら助六とみよ吉とのことだとは思う。あの出来事が残した悔恨はそう簡単に薄れるようなものではない。

例え、残された人達が幸せな道を歩んだとしても、彼自身が満たされることはない。

結局のところ八雲は落語でしか満たされず、そして助六が亡くなり、与太郎を育て上げてしまったいま……彼の心情はいかがなものでしょうか。

ただの頑固ではない彼の選択。

改めて、八雲が背負っている咎の重みを実感した一幕だったと思います。

 

そして彼が助六と対面したあの場所……冥土の入り口だと推測しますが……あのおびただしい数の蝋燭はなんだったのでしょうか? 

僕はそれを八雲自身の落語の数なのではないかと推測するわけです。

そしてその火を他の人間にもっと分け与えていないというのに、「なぜお前はここにきた」と助六は咎めたのかな……と思いました。予想でしかありませんが。

 

なぜにそんなことを考えたかと言いますと、単純にそうあってほしいなと思うわけです。

懐古主義の人間には、当然ながら懐古主義たる理由がある。そのわけを、そこで培った技術を与えずして、ただ朽ちていくというのは……僕の個人的な性に合わないわけです。前述したとおり、僕は八雲と樋口と同じような対立をいましがたタイムリーに経験している。

僕は懐古主義が駄目だとは思わない。しかし、その主義を通すのであれば「残す」ことにちゃんと注力してほしいと願っている。

だから落語心中でのこれからの八雲の動向はとても興味深いですし、雲田先生は間違いなくひとつ納得のできる結論を見せてくれるという確信もあります。

 

これからの落語心中は「残す」物語になっていくことを期待して。

 

松田さんに関して

しかし、最初に倒れたのが八雲でホッとしたのは僕だけでしょうか……。

松田さんじゃなくて本当によかった……と心の底から思いました。

僕は松田さんがこの作品の中で一番好きなキャラクターなんですが、なにかの折に死にそうな気配をみせるものだから不安で仕様がなかったんですよね。

なにせ、彼は八雲以上の生き字引。この一連の騒動を誰よりも近くで眺めてきたのは彼です。当事者ではないにも関わらず、これだけ凄惨な出来事が続いていくにも関わらず、彼は縁の下の力持ちとしていまもなお笑顔を絶やさず八雲一派に寄り添い続ける。なんていい人なんだ。きっと八雲も松田さんにしか話さないこともあるんだろうなあ、とか考えちゃいます。

どんな展開にもスッと自然に溶け込み、話を自然に進めていく松田さん。

落語心中の話の展開にはなくてはならない人ですね、本当に。一番好きです。

 

8巻は8月7日に発売だそうで……夏が楽しみですね。

 

こちらもオススメ

 こちら、雲田先生が挿絵を書いていたわけですが……

 いやあ色気があっていいですねえ。男なのにそそるものがある。素晴らしい。

内容はとてもくだらない(褒め言葉)ので、是非こちらも。

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