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「無敵」を描いた作品「運命の女の子・ヤマシタトモコ・感想」

漫画

 

ヤマシタトモコさんの運命の女の子を読みました。

運命の女の子 (アフタヌーンKC)

運命の女の子 (アフタヌーンKC)

 

 

BUTTER!!!を読んでからヤマシタトモコさんの作品が大好きになりました。青臭い物語を得意とする作家なのかな、と思っていたらサタニックスイートをはじめとした短篇集では真逆と言っていいほどのじめっとした物語も綴られており、更に好きになりました。

むしろ短篇集ほうで描かれた粘度の高そうな作品のほうが得意なのでしょうか。それを抽出して、最高潮にポップにしたてあげたのがBUTTER!!!なのでしょうか。

 

とにもかくにも、運命の女の子を読み終わりました。

最高すぎないかこれ……と読んだあとに溜息を漏らしました。そして読んでいる間、数度の身震いをしました。

「無敵」という話が圧倒的に素晴らしい。

ヤマシタトモコ先生は絶妙に「あ、こういう人は実際にいそう」と思えるキャラを描くのが上手い。人の共通認識をくすぐるようなキャラ作りが上手いのだ

どう見てもぶっ飛んでいるのに、ふとした瞬間に「普通」を覗かせるのだ。例えば美鳥が友達と談笑しているシーンなど。これがキャラにいい具合の現実味を帯びさせている。

それでいながら「こんなやつ絶対いない!」と思うような現実から完全に乖離したような一面も描いてみせる。「無敵」の美鳥は傍目からみれば完全に狂っているようにみえる。「こんなやつ絶対いない!」と思いながらも、垣間見える一縷の共通項がキャラへの現実味に抽出され、絶妙な「いたら絶対ヤダ」という感情へ移行するのを感じた。

ここまでトンだキャラなのに「いたら……」という可能性を引き出すことができるのは本当に凄い。

美鳥というキャラだけで、普通の象徴である刑事をゆさぶり続けるという、立場逆転劇も「無敵」というタイトル相まって最高でした。

この作品は「無敵」という概念を描き切っていると思う。美鳥はこれからも「絶対に負けることはない」という凄まじい説得力があった。

 

ジャンルの振り幅が広い

BUTTER!!!も含めて考えると、とんでもなく器用な作家と捉えるべきなのだろう。

「無敵」の不穏で不敵である種の無垢さをもちあわせた少女を描いたかと思えば、「きみはスター」のように感傷的な話も描いていく、そして「不呪姫と檻の塔」のようにキュアーでポップで、ちょっとだけドラマチックな作品も描く。

 

こう書くと主軸の定まらない作家だと思われかねないのですが、そういうわけでもなく……どの作品も等しく濃い。嚥下するのも難しく、時にはためらってしまうくらいの濃さが作品の中にぎゅっとつめ込まれている。

どのような切り口で作品を描いていても、感情を揺り動かされる。多ジャンルを描く上手さもあるのだろうけれど、なによりも「人間を描く」という揺るぎない根幹があるからこそどこにでもいけるのだと思う

どんなジャンルを下敷きにしようとも、ヤマシタトモコさんが描いているのは「その人間が生み出した感情」なのだ。そこにブレがないから、軽やかにどのジャンルも描ける。

軽やかにみえてもひたすらに濃い。本当にひとりの人間がこれらのキャラクターを生み出せるものなのだろうかと唸ってしまった。

特に「無敵」の濃さは凄まじいものがあった。「ああ、そりゃあこの子は無敵だな……」という説得力があった。そもそも相手を敵だとすら感じていない感があるというか。言動のひとつひとつに息を呑んだ。うわーもう喋らないでくれーとすら思った。でも素敵なんだよなあ。

 

こちらもオススメ

サタニック・スイート (アフタヌーンKC)

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 ということでこちらも面白い。この作品はやっぱり「MUD」が飛び抜けて良い。

 

「サタニック・スイート」のときは文字が多く、言葉で状況や心情を説明することが多かったけれど、「運命の女の子」では絵で魅せてくるところが好きです。

言葉を用いず状況や表情、身体の機微な動作で訴えかけてくる描写に惚れ惚れした。

 

そして僕の2014年ベストに入る最強作品BUTTER!!!

BUTTER!!!(6)<完> (アフタヌーンKC)

BUTTER!!!(6)<完> (アフタヌーンKC)

 

 青春の青臭さを味わいたい人は是非。

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