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ロジカル青臭い「僕は小説が書けない・中田永一・中村航・感想」

小説

 

僕は小説が書けないを読みました

僕は小説が書けない

僕は小説が書けない

 

 

中村航さんと中田永一さんの合作ということで……中田永一さんは全て読んでいるのですが、中村航さんは2~3作くらいしか読んでいない……出身地まったく同じなので縁はあると思うのですが。地元でサイン会してたし……。

 

この作品なのですが、ふたりがリレー小説的に描いた作品と聴きました。それを聞いたときは「原案とかプロットどっちが作るのかな?」と思ったのですが、どうも結構特殊な手法でプロットが作成されているみたいですね。


「機械が人為的なものを創りだすぞー」という名目のものだとは思うのですが、このコンセプトに非常に合った作品内容だと思いました。

「小説というのはいかにして生まれるのか?」というものを青春劇にのせて明言してみた作品だと僕は思います。

用いられた手法を考えると非常にメタ臭のする作品かもしれませんね。

小説を書くための話を、小説を書くためのソフトを使って書くというのは、ちぐはぐでありながら、その前提だけで面白そうな感じがします。

 

この作品が描いているのは「小説を書くための衝動」

「僕は小説が書けない」での高橋くんの書けない理由は「要するに書かないからでしょう?」というところに落ち着くと思うのですがいかがでしょうか。

高橋くんは「書けない~書けない~」と嘆いてはいるものの、結局のところ「書き始めていないから」という理由以外のなにものでもない。

しかし小説というのは「書き始める為の『原動力』が必要」なわけで、それを探し求める物語を始める必要がある。そしてその物語こそが「僕は小説が書けない」なのだと思います。

誰しもなにもないところから物語を生むことはできないという、非常にシンプルかつ「ああ、そりゃそうだ!」と一本取られた感じを読んでいて受けました。

小説を描き始めるまでの高橋くんの衝動をとてもとてもとても青臭い物語にのせて描いている作品だと思います。

 

しかし青臭い物語と書くと、非常に感傷的かつ感情的に描かれた物語に思えてきますが、内容はいたってロジカルだと読んでいて感じました。

なんというか「うおー!おれのこの滾りを作品にぶつけるぜー!!」というよりも「こういう展開がくると、こういう人が必要になるよね、この人はこういうことしようだね」という非常に理路整然とした物語が繰り広げられています。

これはプロットの作成が特殊ということもありますし、ふたりの作者の製作法。特に中田永一さんの作品の影響が色濃く出ているなーと思いました。

原田さんが語った「物語を技術で作る」という手法は中田永一乙一)がよくインタビューで語っている内容ですね、そういえば。

 

この作品には無駄がない

上記したようにこの作品は「技術」で作られた物語です。

なので、非常に緻密で無駄がない。

両親との確執も、御大との対話も、原田さんのクズエピソードも、七瀬への淡い恋心も全ては小説を書くという一点に収束している。ひとつが欠けていれば物語が成立しない。特異体質「不幸」も「キスシーンを目撃してしまう」という偶然性を(弱々しいが)支えている。全ての要素がきちんと「小説を書く」という結論に向かって活きようとしている。

僕はこういうロジカルな構成に弱い。「別にあれはなんでもない要素でいいっしょ」という思考がなく、全ての要素をきちんと拾い上げてそれを結論に結びつけるぞ! という意思がみられると、それだけでいくらか感動してしまう。

 

しかもここまで技術で描かれた作品が描くのは、小説を書く!という「衝動」なわけですよ。

ロジカルな作りでありながら、読後感は「あー青春ものを読んだなー」という感慨に浸れたので見事なバランス感だな……と思いましたね。

原田と御大の制作術に関して明言せずにどちらも立てているわけなんですよ。これはめっちゃいいなーと思いました。

原田と御大の決して交わることのなかった制作術がこういった形で交わりをみせるのは、ちょっとテンション上がりましたね。考えすぎかもしれませんが。

 

正直ながら物語の流れにはやや類型的なものを感じたし、生徒会の介入とかには正直安っぽさを感じたりもしたのだけれど、それでもやっぱり「あー丁寧だなー」という印象が強かった。

でもやっぱり作品の中での目的を作るために生徒会を介入させるのは苦手だー。僕は生徒会が横行跋扈する世界観が非常に苦手だ。

 

印象に残ったのは七瀬と高橋くんが隣合うときに「西瓜五個分の距離を自然に詰めて」という感じ。西瓜五個分って! 西瓜五個分って! たまらんわー。

 

 

よかったらこちらもぜひ。

百瀬、こっちを向いて。 (祥伝社文庫)

百瀬、こっちを向いて。 (祥伝社文庫)

 

こういう青臭い物語たまんないです。豊島ミホとかも大好き。

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