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「落第教師 和久井祥子の卒業試験」の感想

 

落第教師 和久井祥子の卒業試験よみました。

図書館にあったので借りてみました。

 

感想

はたしてどのあたりが落第教師なのだろうか。

最後まで読んで思ったのは、祥子は決して落第教師ではない。

落第(していた)教師という感じのほうがニュアンスとしては近いかな。むしろ教師になってからは、どちらかといえば規範的で非常に生徒想いないい先生だったと思う。

しかしそこがもったいなかったかな……とも思った。個人的にはもっと荒業での締めを期待していた。落第教師と呼ばれる所以が最後の行動に繋がるのだろうなーと思っていたのですが、それがやや弱かったかな……と思いました。勝手に就職試験を受けさせるというのは、教師としては落第ものの選択かもしれないけれど、僕の中ではまだ規範の範疇かな……というのが正直なところ。

まあこのあたりはそれぞれの価値観なので、なんともいえないですね。

 

祥子が従来の教師キャラである金八や鬼塚英吉と違う点をあげるならば「外的評価」や「外的圧力」を気にしたり、屈したりするあたりが妙にリアルだと思った。

誰かから不当な評価を受ければ落ち込むし、誰かから咎められたりすれば行動に迷いがでる。そういった「惑い」が祥子の若さを表していると共に、人間味を演出していて、早期にキャラに馴染めた。

このあたりは若い教師の心情を上手に描けてると思いました。

 

あとモンペの描写はよかったと思いますが、そのモンペがやや類型的だったかな……モンペに悩む生徒というのも、やや類型的。どこかで見たよなーという事件だったので、モンペの一連の迷惑行動も「あー前どっかで見たなー」って気分で、その行動が「本当に迷惑だな」と思うよりも前に、既視感があるなーという気持ちが先行してしまった。

あと瑛斗くん、もうちょっと頑張ろうぜ。なんかもう少し自発的にいろいろ行動しようぜ? と思ったけど、まあ瑛斗くん頑張っちゃうと祥子先生やることなくなっちゃうしな……というのが作劇的に難しいところだよなーと思いました。

父のところに足繁く通うとか実は瑛斗くんでもできるんだけど、それをさせないためにモンペ母が足かせになり、祥子さんが会いにいく(=主人公が活躍する名分)理由をつくりあげた流れは結構キレイだったと思う。

けど、そのせいで瑛斗くんがあんまりなにもしてないキャラに見えてしまった。

モンペがモンペとして機能はしていたので、その行動に真新しさを求めるのはやや穿った見方かもしれないけれど……うーむ、どうしても3月のライオンのモンペのほうが強そうだし、厄介そうな感じがする……という気持ちが拭えなかった。

 

まあこの作品、最終的になんとかなってない、ってあたりも妙にリアルだったな。

 全然母親の説得に成功してない、ってあたりが「だよねー」ってなった。あの条件下の中で新しい答えを提示するのは相当難しいし、僕もパッと思いつかない。

パッと思いつくとんでもない方法なら、瑛斗くんの子供を祥子さんが孕むとかもできたかもしれないんだけどどう考えてもバッドエンドだしな~落第教師ではあるし、インパクトだけはあるんだけど。瑛斗くんの就職したい理由とかが弱いとか、いろいろと詰めの甘い点もリアルって言えばリアルか。そうだよな高校生が就職したい理由なんて、結局のところそんなもんだよなー、と変な納得をしてしまった。「マジキチオカンから離れてえぜ!」の感情が一番強いからこそ、浅はかに考えが直結するあたりはかなりリアルなんですよね。追い込まれてるときって、考えがかなり単調になりますから。「マジキチオカンから離れるため、とりあえず十年後のビジョンは度外視して、一番成功率自己実現性が高いほうを選ぶぜ! その場合において一年間の浪人リスクとその間の学力定着性を考えた結果、就職のほうが自分にはあっていると判断したぜ!」なんて言う高校生イヤです笑

 

読んでいて思ったのが「あれ、もしかしてこれ2巻とかかな? なにかしら前作があったっぽい感じだな」と思っていたのですが……前作のキャラが今作では成長して登場パターンの作品だったんですね。いわゆるスピンオフというやつですかね。

割と重要なエピソードなのに、さらっと説明して特に心にひっかかりを産まなかったので「んー?」と思っていたのですが、謎が解けました。

前作の話の内容が結構重要な要素になっているので、読んでいないと作品のキャラに没入することが難しいかもしれない。田路と祥子の関係とか、教師と生徒以上のものを見出すことができなかった。

そして結果として関根と祥子の恋も「前作ありき」の描き方なので、読んでいるこっちとしては「ヘタレ男がなんか妙な自信をつけ始めて、突如告白した」というふうにしか見えない。最後まで「及川のがいいやつに見えるけどな……」と思ってしまった。もう少し及川を嫌なやつにしてもよかったかもしれない。

まあスピンオフ作品みたいな位置なので、それを知らなかった僕が悪い。しかし裏表紙かなにかに書いておいてもよかったんじゃないかな……。

たぶん僕みたいな人、それなりの数いると思うな。

 

ってなわけで、前作読んでいない僕からすると恋の部分は蛇足だったと僕は思いますね

はっきり言って、読んでいて恋のパートになると「うわっまた関根くんがうじうじやってるよ……」と思ってしまっていた。関根くんもう少しがんばれよ……と思ってしまった。前作読んでいる人ならば関根くんの感情の機微を拾えたのかもしれませんが、僕からすると「及川寝とったれ」の感情のほうが強かったです。

「私のすることに背中を押してくれた」というのが決め手ですが、大事な時期に電話口などで意味不明な物言いをして祥子の心を掻き乱した関根くんの、どのあたりが背中を押しているのだろうか……? と思ってしまった。

読んでいる分には、どちらかといえば及川さんのほうが公私のバランスをみて、中立的な立場から意見くれそうな気がするんだけどな。

でもこればっかりはそれぞれの価値観だからなー。これは前作読んでないのが、もったいなかったなー。関根くんと祥子の関係性をもっとちゃんとみてれば、物語に没入できたのになーモッタイナイ! と思いました。

 

ってことで、暇があればこっちも読んでみようと思います。

きじかくしの庭 (メディアワークス文庫)

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